RICE処置(ライス処置)とは、スポーツなどでケガをしたときの応急手当の基本です。
ケガの中でも捻挫や打撲などの急性外傷が起こったときにRICE処置で対応します。
RICE処置は、下記の英語の頭文字をとった略称です。
- Rest: 安静
- Ice: 冷却
- Compression: 圧迫
- Elevation: 挙上
この記事では、RICE処置のそれぞれの対応について解説します。
RICE処置について解説する前に、急性外傷と応急手当について簡単に説明させてください。
目次
急性外傷とは
パーソナルトレーナーが関わるケガは、急性と慢性の2つに分類されます。
急性のケガには、捻挫や打撲、骨折などが含まれ、1回の外力よって起こるという特徴があります。
一方、慢性のケガは、長期間の繰り返しの外力によって起こります。
腰痛の場合には、急性も慢性の場合もあるため、パーソナルトレーナーはどのようにケガをしたかを聞き取ることによって分類する必要があります。
重たい荷物を運ぼうとしたときに腰を痛めてしまうぎっくり腰は急性のケガ、ぎっくり腰のように1回の動作で痛みが生じたのではなく、少しずつ腰が硬くなってきて、痛みが増してくるような筋・筋膜性腰痛は慢性のケガです。
また、ケガは傷害とも呼ばれ、急性のものを外傷、慢性のものを障害と呼ばれています。
この記事では、分かりやすくするために急性外傷と書きましたが、外傷と障害と分類するのが一般的です。
外傷と障害の分類について、もっと詳しく知りたいという方は下記の記事を読んでみてください。
さらに、外傷は、皮膚からの出血が伴う創傷と皮膚からの出血が伴わない挫傷に分類されています。
創傷には、すり傷(擦過傷)や刺し傷(刺傷)、切り傷(裂創)などが含まれます。
一方、挫傷には、捻挫や打撲、肉離れなどが含まれます。
今回の記事で解説するRICE処置は、外傷でも挫傷に対する応急手当です。
応急手当とは
応急手当とは、一般市民の行う心肺蘇生法と止血法である救急蘇生法以外の手当です。
応急処置は、救急隊員の行う処置になるので、パーソナルトレーナーが行う救急対応としては、応急手当という言葉を使うのが適切です。
また、ファーストエイドは、急な病気やケガをした人を助けるためにとる最初の行動と定義されているため、ファーストエイドには、心肺蘇生法と止血法も含まれています。
パーソナルトレーナーが応急手当をする際には、応急手当をする前の評価・応急手当中・応急手当後は常にケガをしたクライアントさんとコミュニケーションをとり、評価は継続して実施することを意識する必要があります。
パーソナルトレーナーがクライアントさんの応急手当をするのは、トレーニングセッション中に起こったケガだけではなく、トレーニングに来るときの途中でのケガや前日などに負傷したケガも考えられます。
Rest: 安静とは
RICE処置の1つ目は、Rest: 安静です。
安静の目的
急性外傷への応急手当としての安静の目的には、
- ケガした部位(患部)の悪化予防/二次的損傷の予防
- ケガの回復、治癒促進
- 余分な血流を抑え、痛みや腫れの軽減
- 筋肉の硬直(スパズム)を和らげ、痛みの軽減
- 心理的な緩和による痛みの軽減 など
安静の手順
安静の手順として具体的には、患部を動かさないようにして、楽な姿勢をとらせます。
楽な姿勢は、患部や個人によって変わるので、ケガをしたクライアントさんとコミュニケーションをとり、ケガをしたクライアントさんにとって楽な姿勢をとる必要があります。
また、安静はRICE処置の1つの対応になるので、安静以降の冷却・圧迫・挙上を考慮した楽な姿勢を選択することが必要です。
次のIce: 冷却は、部位によってアイシングする時間は異なりますが、足首を捻ってしまったときには約30分アイシングを継続するので、クライアントさんのスケジュールも考慮する必要があります。
Ice: 冷却とは
RICE処置の2つ目は、Ice: 冷却です。
一般的には、アイシングと呼ばれています。
アイシングについては、2005年くらいからアイシングは組織の修復や治癒過程を妨げるという研究結果が報告され、応急手当として疑問視されています。
今では、専門家によってアイシングに関して意見が異なります。
また、応急手当としてのアイシングとコンディショニングとしてのアイシングを混合されている場合もあるので注意が必要です。
最新の研究や専門家によってアップデートしながら、パーソナルトレーナーはクライアントさんの状況などを踏まえながらアイシングを実施するのか、しないのかを判断する必要があります。
応急手当としてのアイシングの目的
急性外傷への応急手当としてのアイシングの目的には、
- 血管の収縮による内出血・腫れの軽減
- 痛みの軽減
- 筋肉の硬直(スパズム)を和らげ、痛みの軽減
アイシングの手順
アイシングの手順とし具体的には、アイシングバッグや氷嚢を作り、患部に密着させます。
アイシングバッグや氷嚢を作る際には、患部のサイズに合わせ、平らで患部に密着しやすいようにする必要があります。
アイシングバッグを作る場合は、患部のサイズに合うように氷の量を決めて、氷が平らにまんべんなくなるように並べてから袋の中にある空気を吸いだします。
家庭用冷凍庫の氷は、0℃以下で表面が乾燥し、皮膚にくっつくようになっているので凍傷するリスクが高くなっています。
このような氷を利用する場合には、氷を一度濡らしたり、アイシングバッグの中に水を入れることによって0℃以下にならないようにひと手間を入れる必要があります。
袋の中に空気が入らないように袋の口を回しながら閉じて、しっかりと袋を結びます。
アイシングバッグをうまく作れたかを確認するためには、袋の口を持って、アイシングバッグの中にある氷が固定され、崩れないかどうかでチェックできます。
アイシングをすると、通常4つの感覚が変わってきます。
アイシングをする前にアイシングをするクライアントさんに対して、この4つの感覚が変わってくることを伝えることも大切です。
患部の部位によってアイシングを実施する時間の目安は異なりますが、4つ目の感覚である無感覚になったらアイシングバッグをとる目安です。
- 「冷たい」という感覚
- 「刺す」ような感覚
- 「焼ける」ような感覚
- 感覚がなくなる無感覚
アイシングには、寒冷過敏症や末梢循環障害などの禁忌があります。
また、肘の内側や膝の外側など、皮膚の近くを神経が走行している部位をアイシングする際には、特に注意が必要です。
Compression: 圧迫とは
RICE処置の3つ目は、Compression: 圧迫です。
圧迫の目的は、腫れを防ぐことです。
受傷直後に目立った腫れがなかったとしても、適切な応急手当をしていないと二次的障害が発生し、腫れが広がってしまう可能性があります。
これを予防するためにも圧迫は特に重要です。
腫れを防ぐために、バンテージやフレキシラップなどを使って心臓に対して遠位から近位の方向へ、圧迫がかかるように巻いていきます。
アイシングは凍傷にならないようにアイシングをして無感覚になったとき、または患部の部位によって設定された時間になったときにはアイシングバッグをとり、断続的に実施しますが、圧迫についてはなるべく継続的に実施します(睡眠中も圧迫を継続する場合には医師に要相談)。
パーソナルトレーナーがRICE処置する際には、バンテージなどを使って巻きながら圧迫するだけではなく、パットを使用することも有効です。
Elevation: 挙上とは
RICE処置の最後は、Elevation: 挙上です。
挙上の目的は、患部への血流量を減らすことによって腫れを最小限に抑えることです。
患部への血流量を減らすために、患部を心臓より高い位置に保ちます。
挙上については、睡眠中でも実施できるので、なるべく挙上は継続するようにしてください。
RICE処置の注意点
受傷してから痛み・熱感・腫脹などの炎症症状が続く24時間後から72時間後までの急性期の対応がとても重要になります。
この外傷の急性期の対応として代表的なのが、RICE処置です。
RICE処置は、トレーニングセッション中のケガでなければ、ほとんどの場合がケガをしたクライアントさん自身が実施することになります。
RICE処置の最後のEはElevation:挙上ですが、私自身は、挙上に加えてEducation: 教育も含まれていると考えています。
ケガをしてから急性期である24時間後から72時間後までいかにRICE処置が重要かを受傷したクライアントさんに説明して理解して実施してもらえるように教育するかがとても大切です。
また、捻挫のII度や肉離れのII度の部分断裂や骨折、脱臼/亜脱臼などの器質的変化を伴う外傷と血行障害や神経障害を伴う急性コンパートメント症候群などの疑いがあるときには迷わずに整形外科医の診察を受けることも重要です。
最後に
RICE処置は、安静・冷却・圧迫・挙上の応急手当の基本です。
パーソナルトレーナーとしては、トレーニングセッション中に起こってしまったケガへの応急手当ができるようにすることも必要ですが、クライアントさんが日常生活でケガをしてしまったときに自分自身でも対応できるようにクライアントさんに教えることも大切です。
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